重力レンズの考察


重力レンズとは一般相対性理論によって予言された現象で、重力によって空間が曲がりその空間の曲がりに沿って光が進む事によりレンズのような効果があることから重力レンズと呼ばれています。

この現象で、解説書に必ず載っているのが落下するエレベーターの思考実験です。

図−1

図−2

概略は、図−1のようにエレベーターが落下する瞬間に光源AからBに向けて光が発射されるというものです。
エレベーター内の観測者はAから光が真直ぐBに到達するのが観測される。
この時エレベーターの外に居る観測者は図−2のように光がAからBに到達する間にエレベーターが落下している為、光はAからB'のように曲がって観測されます。
この事から無重力(自由落下中のエレベーター内)では光は真直ぐ進み、重力の有る空間(エレベーターの外)では光は曲がるというのです。
また光は真直ぐ進むという性質から、光が曲がるのは空間が曲がっていて、その曲がった空間に沿って進む為という事になります。
結果として重力によって空間が曲がるという結論になります。

ここまででも色々怪しいところ(なぜ光が発射されるのが落下する瞬間なのか、エレベーターの外で同時に光を発射した時その光がどのような軌跡を描くか等)も有ります。
要するに重力によって光が曲がるという結論が先に有って、都合の悪い事には全て蓋をしている感は否めないのですが、とりあえず置いといて話を進めます。

図−3

図−4

ここで、矢印では分かり難いので図−3の様なある程度の大きさを持った筒での解説に代わります。
図−3で筒の上側の方が下側より長くなっています。
光速は一定なので下側より上側の方が時間が早く進む事になり重力によって時間の進み方が遅くなるという結論になります。

ここでエレベーターが落下する瞬間に光源Aから発射される光をレーザーパルスにしてこの思考実験を考察してみましょう。
レーザーパルスは図−4のように真直ぐのままスライドしていくだけで、決して図−3のように曲がるわけではないのです。
これは光時計の考察でも述べましたが、図−3のように曲がったとするとパルスの先端だけがB点(図−2のB')に達し残りの部分は全て先端がB点に達した地点(図−2のB')に当たります。
その間もエレベーターは落下している為エレベーターのB点はさらに下に移動しています。
これをエレベーター内から観測すると、パルスの先端のみがB点に当たり後の光は上にずれていきます。
これでは最初の命題(エレベーター内では光はAからBに真直ぐ進む)をクリア出来ません。
この命題を満たすには光は常に直線AB上になければならないのです。
図−4でレーザーパルスの上端と下端の移動経路の長さは同じです。
重力によって時間の進み方が変わる事はないのです。

思考実験では理屈さえ付ければ曲がらない物も曲がるのです。


現在さまざまな解説書等に一般相対性理論が検証されたとして、必ず取り上げられるのがエディントンが1919年の皆既日食のときに行った観測です。
内容は日食の際の太陽直近の星の位置と本来の位置とのずれがほぼ相対性理論の予測値に等しかった事から重力により空間が曲がっている証拠であるとされている。


しかしこの観測結果も不鮮明でばらつきの大きなデータの中から予測値に近いデータのみ取り上げていたのです。
最初に結論が有ってそれに合うようなデーターだけを取り上げていただけなのです。

図−5

実は同じような現象は地球上でも観測できます。
図−5は日の入りの図です。
実際には地平線や水平線の下に沈んだはずの太陽が地平線や水平線上に見えるのです。
これは大気中の屈折によるもので、蜃気楼や逃げ水等と同じ現象で光は以外に簡単に曲がるものなのです。
さて太陽はどうでしょう。
太陽が水星のように固体で大気を持っていないのであれば光が曲がっているという事=空間が曲がっている事になりますが、ご存知のように太陽は気体で出来た天体です。
日食で月に隠れた部分の外側にはコロナと呼ばれるプラズマ大気層が太陽半径の10倍近くまで広がっています。
太陽近傍を通る光はこのコロナ大気層内を通過する事になります。
さて、太陽近傍の星の位置がずれるのは本当に空間が曲がっている為なのでしょうか、コロナ大気層による屈折は起きないのでしょうか疑問が残ります。

ただし、近年追試実験として火星探査機バイキング1号と土星探査機カッシーニで外合(地球と太陽を挟んで直線になる位置)前後に電波の往復時間から地球との距離を測る実験をしていて、太陽に近付くほど実際の距離より電波が遅れて届く事が確認されています。
太陽近傍の空間が曲がっていて電波がより長い距離をこなさなければならない為に電波が遅れ、バイキングは1000分の1・カッシーニは100000分の1の精度で理論値に一致するという結果が得られたとされています。

しかし、惑星探査機による追試実験はさらに複雑になります。
まず一番の問題は、光ではなく電波で行われた為に位置のずれを測定出来る程の精度が無い事です。
そこでどうしているかというと、まず地球・太陽・探査機の位置から相対論で空間の曲率を計算し、直線距離に掛かる時間からの遅れを計算します。
次に実際の測定値と照らし合わせているのです。
ここにも問題があります。
例えば経路の途中で気体等の物質中を通過していると直進していても遅れるのです。
光ならば直進している事が分かりますが電波では実際には直進していても曲がった事になってしまうのです。

電波の経路が太陽に近付くとコロナ大気層を通過することになります。
コロナ大気による減速の効果と屈折による曲率の効果で電波は遅れます。

さらに例えば、放送局とアンテナの間に障害物があってもよほど障害物の近くでない限り電波は受信できます。
これは波の特性で回り込み(正式には回折)という現象です。
光はほぼ直進しますが、電波は周波数が低くなるほどこの現象が顕著になり曲がります。
この場合電波は曲がりますが障害物の重力で空間が曲がっている訳ではありません。

このように電波は遅れたからといって経路が曲がったとは言えず、曲がったからといって空間が曲がっているとはいえないのです。

いくら理論値に一致するからといって理論が正しいとは言えないのです。